高速道路の深夜割引見直し、運用開始は令和8年度以降に

NEXCO東日本・中日本・西日本の3社は、2025年10月29日、深夜割引制度の見直しに向けたシステム整備の進捗状況について公表しました。
令和7年(2025年)4月6日にNEXCO中日本管内で発生した広域的なETCシステム障害の影響により、一時中断していたシステム整備を再開しており、現在は走行履歴情報の作成および還元額計算用機器へのデータ連携機能の構築を慎重に進めているとしています。
3社は、システム整備の進捗状況を踏まえたうえで、深夜割引見直しの運用開始時期について改めて案内するとしており、現時点では令和8年度(2026年度)以降となる見通しです。
ETC障害を踏まえた慎重なシステム検証
今回の見直しに向けたシステムでは、料金所のETCレーン及び本線上に設置されたETCアンテナを活用し、車両の通過地点や通過時刻を取得。その情報をもとに走行履歴を作成し、深夜割引適用時間帯に応じた割引額(還元額)を計算する仕組みとなっています。
4月に発生したETCシステム障害では、広域管理システムから地域管理システムへデータを配信する際に破損が発生し、一部車両でETCレーンの発進制御バーが開かない不具合が生じました。
原因は、ETCカードの判定データ部分に他の情報データ(宛先データ)が上書きされ、破損したことによるものです。この問題は、送信後の宛先データを消去する機能がなく、データが蓄積した結果、判定データを侵食して破損を引き起こしたことが確認されてました。検証の結果、これを原因と確定しています。このため、NEXCO各社はデータ破損検出機能の追加や再発防止策の実装を進めており、システムの信頼性向上を最優先に対応を進めているとしています。

(引用元:NEXCO3社より)
深夜割引見直しの目的と内容
深夜割引制度は、一般道の沿道環境改善や夜間の高速道路利用促進を目的に実施されています。現在は午前0時から午前4時の間に高速道路を通行するETC車を対象に3割引が適用されていますが、短時間の滞留や割引待ちによる混雑、運転者の労働環境悪化などが課題とされてきました。
見直し後は、割引対象時間帯を22時から翌5時までに拡大し、そのうち実際に深夜時間帯を走行した距離分のみ3割引を適用する方式に変更されます。これにより、深夜帯の利用を促進しつつ、深夜0時前後に発生していた滞留問題の緩和を目指します。
また、長距離走行に対する負担軽減として、400kmを超える区間での長距離逓減制(距離に応じた割引率の調整)も拡充される予定です。さらに、無謀な運転を防止するため、深夜割引の対象距離に上限を設定する措置も導入されます。これは、走行時間に応じて大型車は1時間あたり90km、それ以外の車両は105kmを上限とするもので、速度超過による危険運転の抑止を目的としています。
信頼性確保を最優先に慎重な検証作業
NEXCO各社は、データ連携機能の構築完了後、走行履歴情報をもとに割引額が正確に算出されるかどうかを入念に確認する動作検証を行う方針です。ETCシステム障害の教訓を踏まえ、動作確認には十分な期間を確保し、信頼性の高い運用を目指すとしています。
深夜割引の見直しは、交通の分散化や環境負荷軽減に資する重要な取り組みである一方で、安全性とシステム信頼性の確保が求められています。3社は今後も検証作業を慎重に進め、準備が整い次第、改めて運用開始時期を発表する予定です。
<引用:NEXCO東日本
https://www.e-nexco.co.jp/news/important_info/2025/1029/00015436.html>