道路が巨大なワイヤレス充電器に!? 館山道で始まる「走りながらEV充電」プロジェクト

電気自動車(EV)の普及に向けた最大の課題とも言える「充電」と「航続距離」の問題。その常識を覆すかもしれない革新的なプロジェクトが動き出しました。
NEXCO東日本は2026年5月26日、館山自動車道において、日本初となる高速道路本線での「走行中無線給電(DWPT:Dynamic Wireless Power Transfer)」の実証実験に向けた参画企業を決定したと発表しました。
走りながら充電?「走行中無線給電(DWPT)」とは
走行中無線給電(DWPT:Dynamic Wireless Power Transfer)とは、道路の路面下に埋設された送電コイルから、走行中の車両に搭載された受電コイルへ非接触で電力を送るシステムです。
スマートフォンのワイヤレス充電を高速道路のスケールに拡大し、クルマが走りながら充電できる仕組みと言えば分かりやすいでしょう。これにより、EVは充電のための停車時間を大幅に減らせるだけでなく、搭載するバッテリーの小型化にも繋がります。なお、給電対応していない一般車両が上を通過しても送電は行われない仕組みになっています。

(引用元:NEXCO東日本)
館山道での実証実験の概要
今回の実証実験(通称:館山プロジェクト)は、NEXCO東日本が掲げる次世代高速道路構想「moVision」の重点プロジェクトの一つとして実施されます。高速道路の本線という実際の交通環境下で検証が行われるのは日本初の試みです。
- 実施場所:館山自動車道 君津PA付近の本線
- 実施延長:約300mの範囲
- 実施時期:令和9年度(2027年度)以降に複数回予定

(引用元:NEXCO東日本)
日本を代表する企業が参画
本プロジェクトの大きな特徴は、自動車メーカー、ゼネコン、そして大学の研究機関が強力なタッグを組んでいる点です。東京大学大学院新領域創成科学研究科(藤本・清水研究室)の技術支援のもと、車両・設備・施工を共同で行う以下の2チームが参画予定です。
- ・株式会社本田技術研究所、大成建設株式会社
- ・トヨタ自動車株式会社、株式会社デンソー、株式会社大林組
日本を代表するトップ企業が名を連ねていることからも、単なる技術検証にとどまらず、本格的な社会実装を見据えていることが伺えます。
この技術がもたらすメリットと未来の高速道路
この実証実験が成功し、将来的にインフラとして普及すれば、私たちの社会や生活にどのような影響を与えるのでしょうか。
1. EVの航続距離不安の解消とバッテリーの小型化
長距離ドライブや物流トラックにおける「電欠」のリスクが解消されます。また、航続距離を伸ばすために巨大で重いバッテリーを積む必要がなくなり、「小さなバッテリーでも遠くまで行ける」という新しい設計思想が生まれ、車両の軽量化やコスト削減に貢献します。
2. 長距離物流のEV化を通じた脱炭素化への貢献
GX(グリーントランスフォーメーション)の推進に向けて、長距離トラックをはじめとする商用車の脱炭素化は重要な課題となっています。しかし、航続距離の不安から、これまで「長距離物流のEV化」には高いハードルがありました。今後、DWPT(走行中無線給電)インフラの普及によってこの懸念が解消されれば、既存のディーゼル車からEVへの置き換えが急速に進み、物流業界の脱炭素化を強力に後押しすることが期待されています。
3. 高速道路の役割と「ETC・料金体系」の変化
これまで「移動のための道」だった高速道路が、「エネルギーを供給する社会基盤」へと進化します。実用化されれば、将来のETCシステムは「通行料金+給電料金」を同時に処理する高度な課金システムへと進化し、高速道路ビジネスそのものを大きく転換させる可能性があります。
まとめ
館山自動車道で予定されている日本初の「走行中無線給電」実証実験。数年後には「高速道路を走る=移動しながら充電する」という世界が当たり前になるかもしれません。
日本の自動車産業、インフラ運営、そして物流の未来を大きく変える可能性を秘めたこの次世代プロジェクトの進展に、今後も注目が集まります。
<引用:NEXCO東日本
https://www.e-nexco.co.jp/pressroom/head_office/2026/0526/00016228.html>